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Long Interview2 Hiroyuki Aihara

ロングインタビュー「くまのがっこう」文章を担当 あいはらひろゆきさんに絵本の面白さを聞きました 子どもの気持ちを大切にしてお話を書いているあいはらさん。「くまのがっこう」の絵本にこめた思いをうかがいました。

ニュースタンダードの絵本づくり

この数年「くまのがっこう」をはじめ、絵本や読み物を精力的に発表しているあいはらひろゆきさん。
2002年に絵本作家としてデビューする以前は、まったく畑ちがいの広告業界で活躍していました。
絵本の魅力にふれたのは、子どもが生まれ、父親となってからのことでした。
「僕自身が小さい頃は、絵本を読んだ記憶があまりなくて。娘が生まれた時、絵本のガイドブックを見て、60冊ぐらい大量に買って、読み聞かせを始めたんです。名作がそろったのを一気に読んでいって。知らなかったぶん、非常に面白かった。子ども以上に面白さを感じたようなところはありますね」

読者として始まった絵本への関心は、やがてつくり手の側にひろがります。
「若い頃は作家志望だったんです。長いものは書けないけれど、絵本のような、凝縮した世界であれば、つくれるかもな、と」

当時、同じ会社に勤めていたあだちなみさんに声をかけ、一緒に絵本をつくろうということに。
試しに描いてもらった絵によって、あいはらさんの中でイメージが形になり始めました。
「くまがたくさん描いてあって、かわいかったんですよね。それが、娘の送り迎えで毎日見ていた、子どもたちの集団と重なって。朝は百パーセント僕が、帰りも交替で保育園に行ってたんです。ちっちゃい子がずらずらっと並んで歩いてたり、みんなおしりをこっちに向けて窓から外を見てたりとか、かわいいなあと思ってて。あの世界を、あだちさんのくまたちでつくれるな、つくりたいな、と思いました」

初めての絵本づくりで、あいはらさんがめざしたのは“ニュースタンダード”。
「絵本って、一時的に話題になって売れるよりも、長く読み継がれていかないと価値がないなという思いがあって。できるかどうかわからないけど、新しいスタンダードをつくりたいと思ったんです」。
そこで、お話にはあえて新しい要素を取り入れず、設定もテーマも、従来の絵本でおなじみのオーソドックスなものを考えました。
「あだちさんの絵は新しいから、その絵との組み合わせでおのずと新しくなるので。お話まで新しいと、スタンダードにはならないだろうと」

「くまのがっこう」で描かれるのは、くまの子たちの寄宿生活の中で起こる、ささやかなできごと。
やんちゃなジャッキーが騒動を起こすことはあっても、華々しい冒険や大事件はありません。
「派手で冒険的な生き方よりも、毎日の朝ごはんがおいしいとか、早起きしたら気持ちがいいとか、そういう日々の生活のほうが重要だと思ってるんですね。僕自身それを幸せだと感じるし、子どもにもそう感じてほしい。絵本もやっぱり、毎日をあたりまえに暮らすことが幸せなんだよっていうことが伝わる作品でありたいなと思います」

あいはらさんは、読者の子どもだけでなく、読んであげる大人をも意識して絵本をつくっています。
「絵本は子どものもの、という意識がこの世界では非常に強くて、それはもちろんそうなんだけど、お母さんも一緒に読むわけですよね。だからお母さんにも楽しいものがいいよね、というのはかなり考えてました。僕自身が親なので、親として読んで面白いものがほしいなと」。
そういう視点を持った絵本づくりが、「くまのがっこう」のヒットに結びついたのだろうと分析するあいはらさん。
「でも、編集者にはよく言われるんですよ。プロデューサー的な視点を捨てて、作家に専念してつくりなさいと。だけどつい、よけいなことを考えちゃうんで(笑)」

子どもが安心してがんばれる世界を

「くまのがっこう」は大人の登場しない、子どもだけの世界です。
「企画の段階では出そうという話もあったんですが、大人が出てくるとそこで終わっちゃうんですよね。絵本の世界の中では子どもだけでがんばっていて、大人はそれを外側から応援する。それは僕ら作者であり、読者でもあるわけです。僕はそれが理想形だと思うんです。テキストをお母さん的な語り口で書いているのも子どもたちを見守る感じを強めたかったからです。現実でも、子どものすることに大人は手を出さず、少し離れて見守っている。すると子どもは安心して自由に遊ぶ。そういう距離感が一番いいんですよね。僕自身すぐ手を出しちゃいますけどね(笑)」

小さなくまのこたちが力を合わせて奮闘する様子に、読者は自然と絵本の中に引きこまれます。
がんばりやさんのジャッキーと、その力が及ばない時はいつでも救いの手をさしのべるおにいちゃんたち。
かれらとともに笑ったり泣いたりしながら、愛情に包まれた世界のぬくもりを感じているのです。

「娘とか、娘の友だち、今の子どもたちを見てると、みんなすごく一所懸命やってるんですよね。だけど社会は、それをうまくサポートするような形になっていない。子どもたちが安心してがんばれるような世界であってほしいなという思いは強いですね」

これから書きたいのも、やはりそうした、ひたむきな子どもを主人公にした物語、とあいはらさんは言います。
「がんばってがんばって力尽きたら、投げ出せばいいし、助けを求めれば、しょうがないなと言いながら、皆、絶対助けてくれる。だからがんばろうよ。そういう世界観は、やっぱりずっと書いていきたいテーマですね」

あいはらひろゆきさんの好きな絵本5冊

『エミリー』 マイケル・ビダード/文 バーバラ・クーニー/絵 掛川恭子/訳 ほるぷ出版 定価1470円 「詩人と少女との間の奇跡のような交流を描いた絵本。娘が大好きな作品でもあります」 『おおきななみ』 バーバラ・クーニー/作 かけがわやすこ/訳 ほるぷ出版 定価1470円 「絵の好きな少女が画家になることを決心するまでの物語。繊細で芯の強い絵も印象的」 『ゆうびんやのくまさん』 フィーゼ&セルビ・ウォージントン/作・絵 まさきるりこ/訳 福音館書店 定価945円 「『くまのがっこう』のテーマである『あたりまえの日常の素晴らしさ』はこの絵本から学びました」 『きつねのかみさま』 あまんきみこ/作 酒井駒子/絵 ポプラ社 定価1155円 「あまんさんの描く世界は日常に寄り添っていながら、とても幻想的。酒井さんの絵も素晴らしい」 q『もじゃ もじゃ』 せなけいこ/作 福音館書店 定価630円 「ルルはぼくの理想の女の子。おこりんぼなところはどこかジャッキーと重なります」